介護の現場で働いていると、毎日が特別な時間の出会いの連続です。
何気ないひとことが、心の奥をあたたかくしてくれることがあります。
たとえば、98歳の女性の利用者さん。
とてもおしゃれで、いつも身なりをきちんと整えていらっしゃいます。
ある日、お茶の時間に「お紅茶入りましたよ」と声をかけると、
ぱっと表情が明るくなって「わぁ、嬉しい!2杯飲む!」とにこにこ。
そのあと、ふとした時に「あなた、立派になったわねぇ」と優しい声。
昨日もお会いしているんですけどね。
でもその言葉が、胸にじんと染みて。
立派かどうかはわからないけれど、認めてもらえることがこんなに嬉しいなんて。
またある朝、居室で横になっている92歳の男性に「おはようございます。今日もよろしくお願いします」と声をかけました。
私が笑顔で話すと、その方も目を細めて笑顔で「もちろん」とひとこと。
それだけで、なんだか今日がいい日になる気がしてくるから不思議です。
しばらくして「コーヒーをお持ちしました」と言うと、
「コーヒー、大好き」とまた笑顔で応えてくれました。
言葉数は多くなくても、そのやりとりだけで通じ合えるような安心感があります。
私たち介護職員は、医療のプロでも、心理の専門家でもありません。
でも、こうした小さなやりとりの中で、
利用者さんの心の中に、そっと寄り添うことはできるのかもしれません。
あたたかい紅茶と、香ばしいコーヒー。
どちらもほんのひとときの飲み物だけど、
その向こうにある笑顔や「ありがとう」は、
私にとって、何よりも大切なご褒美です。
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