
義父宛てに宅配便が届いた。
我が家は、敷地内に二軒の家が並ぶ。ひとつは義父の家。そしてもうひとつは、私たち夫婦の住まい。ほんの数歩の距離だけど、暮らしは別々。けれど、心はつながっている。
今から4〜5年前、義母が認知症になったのをきっかけに、インターフォンと自宅の固定電話を連動させる機器を購入した。義母が一人で在宅中に、セールス対応をしてしまわないようにと始めた工夫だった。
義父の電話の子機は、我が家の中でも電波がつながりやすい場所に設置してある。家は別々でも、義父宅のインターフォンが鳴ると、こちらでもピンポンと音がする。今ではすっかり、わが家の日常の一部になった。
義母が亡くなった今も、その仕組みはそのまま使い続けている。もう不要かもしれない…と思ったこともあったけれど、今は義父がひとりで暮らしている。少し離れたところから、そっと見守るような役割も果たしている気がする。
この日も、義父宛ての荷物が届いた。私は玄関を出て、笑顔のドライバーさんに言った。
「隣ですが、嫁なんで。預かります。」
「助かります!」と荷物を手渡してくれたその笑顔に、こちらも自然と笑顔になる。
こうして荷物を受け取れること。義父の暮らしを少しだけ支えられること。
思いがけず、あの時の工夫が今も日常の中で活きている。
それがちょっと、うれしい。
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