
最近、「建具屋さんが減ってきているんですよ」という話を聞きました。
そう言われてみると、昔は町の中にいくつもあった建具屋さん、
今ではあまり見かけなくなったように思います。
家のサイズや暮らし方に合わせて、一つひとつ手でつくるオーダーメイドの建具。
でも、今は既製品が主流になって、
後継者がいないまま、お店をたたむ方も多いのだそうです。
それでも、私の家は今も建具屋です。
手でつくるものには、ぬくもりがある
建具は、ただの「戸」や「仕切り」ではなくて、
その家に住む人のことを想って、手でつくるもの。
朝、光がやさしく入るように。
年配の方が軽い力で開け閉めできるように。
梅雨どきに戸が膨らんでしまわないように。
そんな小さな気配りが、ひとつひとつの仕事に込められています。
夫はそれを、子どものころから見てきました。
木の香りと、おがくず。
トントン、ギコギコという音。
黙々と手を動かす職人の背中。
派手な世界ではないけれど、
静かに、人の暮らしを支えている仕事です。
ずっと残ってほしいもの
「こういう建具をつくってくれるところ、もう近くにはなくてね」
「昔の家にあったなあ、懐かしいね」
そんな声を聞くと、胸の奥がきゅっとなります。
手仕事の建具には、暮らしのリズムや家族の気配を
そっと包んでくれる力があると思うのです。
だからこそ、私は思います。
少しでも長く、こういう建具が、こういう職人さんの仕事が、
残ってくれたらいいなって。
小さくても、伝えていきたい
大きなことはできないけれど、
私はただ、「建具っていいな」「この仕事ってやさしいな」と思った気持ちを、
こうして書き残していけたらと思います。
それが、私なりのちいさな継承です。
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