建具屋の我が家では、毎日、天気予報をとても気にしています。
天気に敏感な職業といえば、農家さんや洗濯屋さん、大工さんなどが思い浮かぶかもしれません。ですが、実は建具屋もそのひとつです。
その理由は、「濡らすことができない」から。
建具はすべて、木材から作られています。そして、障子には和紙が使われています。
どちらも水分にはとても弱い素材です。
たとえば、建具を雨にさらしてしまうと、木材は水を吸って膨張し、反ったり歪んだりしてしまいます。
障子紙もまた、水を吸えばふやけてしまい、乾いたあとにピンと張らず、見た目にも美しくなくなってしまいます。
せっかく丁寧に仕上げた建具が、ほんの少しの油断で傷んでしまうこともあるのです。
だからこそ、天気予報は毎朝欠かせません。
「今日は午後から降るみたいだ」
「今のうちに納品に行こうか」
そんな会話が、食卓で当たり前のように交わされます。
建具を車に積み込むときも、現場で納めるときも、いつ雨が降るかを常に気にしながら動きます。
空を見上げて、「あと30分はもつかな」と読んで判断することもあります。
予報が外れて雨が早まると、慌ててシートをかぶせたり、途中で引き返すことも。
今日は台風が近づいているという予報。
朝から、夫はスマートフォンで天気予報とにらめっこしています。
「この空、どう思う? 雨、夜からにならないかな」
そんなふうに、雲の流れを気にしている姿を見ると、私まで気が気じゃなくなります。
自然と向き合いながら、木材や和紙と丁寧につきあっていく――
それが建具屋の日常です。
晴れた空を見上げて、今日も無事に建具が納められますようにと、願うような気持ちになることがあります。
建具は、ただの「もの」ではなく、人の手と、天気と、少しの運に支えられて出来上がっていく。
そんな日々の中に、小さな緊張と、ほっとする瞬間が交差しています。
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