重なる場所で、思い出す背中

時々、義父や夫が「老人ホームに仕事で行ってくる」と話すことがある。
建具屋として、施設の扉や家具を直しに行く仕事。
その話を聞くたびに、なんだか不思議な気持ちになる。

私もまた、別の施設で働いている。
介護の現場で、利用者さんの生活に寄り添う毎日。
違う立場だけれど、同じように「施設」に必要な仕事。

この前、私が働くホームに職人さんが来ていた。
ドアの開閉がうまくいかないときに、手際よく調整してくれた。
その後ろ姿を見ていたら、なんとなく義父や夫と重なって見えた。

「こうやって、うちの人たちも誰かの暮らしを支えているんだな」
そんなふうに思えた。

私は毎日、利用者さんの顔を見て、声を聞きながら過ごすけれど、
家具や建具を直す人たちも、黙ってその暮らしを支えている。

直接「ありがとう」と言われることは少なくても、
その仕事はたしかに、誰かの毎日を、すこしだけ安心に変えている。

家でも仕事でも、なかなか口にはしないけれど、
ふとした瞬間に、家族の仕事の意味を思い出す。

背中で語る仕事もあるんだな。
私もまた、自分の場所で、できることを続けていこう。


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