雑談の“余白”が信頼を育てる

介護の現場での会話といえば、どうしても「○○さん、起きますよ」「トイレに行きましょうか」といった業務的な声かけが中心になりがちです。でも、その合間にふと交わされる「今日は少し寒いね」「昨日のテレビ観た?」という何気ない雑談の力。私はこの“余白の時間”こそ、介護にとって大切な「潤滑油」だと感じています。

「話しかけられる側」から「話しかけたい相手」へ

ある利用者さんは、入所当初は他人と話すことに消極的で、どこか緊張している様子でした。ところが、私が休憩中にたまたま編み物の話をしたことがきっかけで、「私も昔やってたのよ」と会話が広がりました。それからというもの、その方は私の顔を見ると「今日は編んでないの?」と笑顔で話しかけてくれるようになったんです。

雑談には、相手との関係性をゆるやかに、そして確かに変えていく力があります。こちらから一方的に話しかける関係から、相手からも自然に話しかけてくれる関係へ。これが信頼の第一歩になるのだと感じています。

忙しい時ほど雑談を

業務に追われる時間の中で「雑談してる暇なんてない」と思うことも正直あります。でも、雑談の積み重ねがあると、いざ介助が必要な場面でも「あなたが言うなら、やってみようか」と、前向きな協力が得られやすくなることがあります。つまり、**雑談は“介護をスムーズにする土台”**にもなるのです。

話す内容は“正解”じゃなく“関心”で選ぶ

「何を話したらいいかわからない」という声もよく聞きます。でも大切なのは、“話題の中身”よりも、“相手への関心”です。テレビ、天気、食べ物、花の話。どれも立派な雑談の材料です。そして、聞く側として大事なのは「答えを引き出すこと」よりも「耳を傾ける姿勢」ではないでしょうか。

雑談力は“後からついてくる”

実は私も、もともと話上手ではありません。けれど、相手の表情を見て、ふと気になったことを口にしてみる。それを繰り返すうちに、少しずつ雑談が「私の中の自然な言葉」になってきました。

雑談力は、テクニックではなく“寄り添いたい気持ち”から生まれる力。そう信じて、今日も私は誰かの一言に耳を傾けています。

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