🚪 建具とおがくずと、やさしさに包まれた現場で

夫が建具を納めに行く日、
私はそっと「今日も気をつけてね」と声をかけます。

家で仕上げた建具も、
現場に持っていくと、ぴたりとはまらないことがあるそうです。
ほんの少しだけ削って、整えていきます。

まるで、建物の呼吸にそっと合わせるように。
それは、「ものづくり」よりもむしろ、
「暮らしに寄り添う」仕事のようにも感じます。

 

今回納めたのは、部屋のドア。
角をぶつけないように、
キズひとつつけないように、
運ぶときには毛布でしっかり包み込みます。

現場では、古くなったカーペットや毛布を敷いて、
床を守りながら、部屋を汚さぬよう作業が始まります。
作業台のかわりになるそれらは、
いつも車に積まれている“静かな相棒”です。

 

微調整で削った木からこぼれ落ちる、
ふわふわのおがくず。その場では掃除機で吸われてゴミの扱いになってしまうけれど
その小さな粒を見ていると、
私はふと思うのです。このクズも絶品だって。

暮らしの中にそっと寄り添うものって、
実は目立たなくて、静か。
それでもほっとあたたかいものなのかもしれない、と。

 

今日も帰ってきた作業着のすそに
そっとついていたおがくず。
それを見つけて、私はほっとする。

「無事に終わったんだね」って。

——

暮らしのすぐそばに、
おがくずに包まれた、やさしいものづくりがある。
それを、私は少し誇らしく思っています。

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