
仕事を終えて立ち寄るお墓。
今日も一人、花筒の水を替え、小さな花束をそっと差し替える。
お義母さんが花好きだったから、季節の花を選ぶときはいつも、
「どれが喜ぶかな」とつぶやいてしまう。
花屋さんで出会った、白、黄、ピンクに小さな紫の花。
どれも控えめで、それでいて堂々と咲いている。
少し茎が短くても、花が開いていれば、それだけで十分だ。
「つぼみのまま枯れるより、咲いてくれているほうがいいんです」
お店の人のそのひと言に、私の心もすっとほどけた。
檜のお線香を灯して、手を合わせる。
風がそっと髪を揺らす。
聞こえるのは、鳥の声と遠くの車の音だけ。
静かな時間の中で、「ありがとう」を心の中で何度も繰り返す。
言葉にはならない思いも、花が代わりに受け取ってくれる気がして。
暑い日が続いているけれど、
今日も花は、黙ってそこに咲いてくれていた。
ありがとう。
咲いてくれて、ありがとう。
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