
いつも通りじゃない旅と向き合って
「割引券があるから、みんなで温泉に行かないか」
そんな一言から始まった今回の旅。
誘ってくれたのは義父の友人。
以前から家族ぐるみで付き合いのある方で、義父も「久しぶりにみんなで出かけるか」と嬉しそうだった。
車で向かった先は、水上温泉。緑に囲まれた山々、清流の音、温泉宿――普段なら心からくつろげる場所のはずだった。
でも、どこか違っていた。
宿は取ってくれていたけれど、それ以外のことには、正直、余裕がなかったように感じた。
道中の段取り、食事のこと、年配の方々の体調や動き――
何か起こるたびに、「ああ、私が見なきゃ」と気が張る。
周囲に合わせて動き、気を配り続けるうちに、静かに疲れがたまっていった。
70代、80代の旅は、若いころの「みんなでワイワイ」ではない。
足腰の具合、食事の量、トイレのタイミング……そんな小さな「違い」が積み重なっていく。
義父も、その“違い”を感じていたようだった。
言葉にはしなかったけれど、目の奥に、ふとした寂しさが見えた気がした。
私は今回の旅で、**「今までと同じ旅は、もうできないんだ」**ということを静かに受け止めた。
でも、それは悲しいことだけじゃない。
歳を重ねても、旅をしようとする気持ち。
誰かと過ごしたいという思い。
その中にある優しさやつながりの形が、今は少しずつ変わっていくのかもしれない。
楽しかった、と素直に言うには少し疲れすぎた。
でも、「一緒に行けてよかった」と思えた瞬間も、ちゃんとあった。
だから私は言いたい。
旅を支えた自分に、「お疲れさま」
頑張りすぎたけど、ちゃんとやり遂げた私に、「ありがとう」
また次の旅があるなら、今度は自分のペースも少し大事にしてみよう。
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